New Sister.【きららMAX2021年8月号感想】

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 ・エルのセカイ①

 

エル…神沙姉妹のセカイは、頻繁に『2人だけの世界』として表現されていたように思います。

特に印象深いのが1月号のこれ。 

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きららMAX 2021年1月号 p5-1コマ目

ごちうさは変化も不変も強く肯定している作品ですが、こと神沙姉妹についてはネガティブなニュアンスで閉じた世界にいることを念入りにアピールしていたように感じていました。

そんな神沙姉妹は"外"、ココアたちになにか惹かれるところがあったようで、理解が追いつかないなりに見て聞いてみたりしていたわけですが……

 

10巻序盤あたりでは、神沙姉妹にとって木組みの街の喫茶店は言ってしまえば『チノのいる店』とそれ以外みたいなところがあったと思います。

これが、実際に甘兎とフルールにも行ってみて『守るべき場所』だと思えるようになったのならとても嬉しいことです。

ラビットハウスも、『チノのいる店』としてではなく喫茶店ラビットハウスとして愛してくれているのでしょう。

 

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きららMAX 2021年8月号 p110-6コマ目

これの嬉しいところ、我が物にしよう、という形でチノのコーヒーに惚れ込んだ人が、今はチノのいる場所ごと愛してくれるようになったところですね。

神沙姉妹のセカイに木組みの街が組み込まれた話。

 

 ・エルのセカイ②

今月号は神沙姉妹に木組みの街が受け入れられ、セカイが広がった回です。

が、ごちうさは変化も不変も強く肯定している作品なので、神沙姉妹のミクロなセカイも同時に補強します。

 

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きららMAX 2021年8月号 p111-8コマ目

1月号(記事冒頭参照)でネガティブなニュアンスで触れられた『二人きりの世界』が一気に明るくなったようで、これがすごく嬉しい。

こうして認められる・認められたいと思える大切な人がいたからこうして真っ直ぐ育つことができた、こういう形の相互依存ってまさしくこの世界における姉妹なのですよね。いま一番彼女たちのことを姉妹らしいと思っている。

 

『二人きりの世界』は長らく閉じられていたセカイではあったけど、しかし間違いなく姉妹を健やかに育てたセカイだった。

そして、旅行での出会いを経てセカイが広がった後もこの二人だけのセカイがポジティブな意味で健在であることが、とてもごちうさらしくていいなと感じます。

 

エルの話終わり。

 

・お二人はどういった関係で?

神沙姉妹の話。

 

突然ですけど、最近見た姉妹兄弟観で印象に残ったものがありまして、

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『呪術廻戦』16巻 p175

 

先導して道を示す、という点はモカココチノの関係に一部感じるところがあります。

 

モカココのモカは絶対的な道を背中で示す生き方が強く表れているように見えます。

また、モカを見て『姉』像を形成したココチノのココアもこれに近い生き方をしているように見えます。最近はどうやら意識的に見守るムーヴを取っているというか、前だけに立っているわけではないようにも見えますが。ココアさんはそういうとこも含めて脹相っぽい(?)

 

多少の違いはありますが、ココアを軸とした2つの姉妹がこれまでの『ご注文はうさぎですか?』の姉妹観として根付いていたのではないでしょうか。

 

そんな中やってきた、ココアとは無関係な3組目の姉妹が神沙姉妹なわけです。

ここまでで言いたいことはだいたいこの通り。

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お姉ちゃん図

 

 

10周年イヤーでついにベールが剥がれ始めた新たな姉妹、その実態は…

 

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きららMAX 2021年8月号 p107-4コマ目

まず、本人も言っている通り、どちらが姉/妹かといった意識は薄めな(皆無ではない)ことが注目ポイントではないかと思います。

先導意識が薄いことに起因する精神的な距離の近さ、これはごちうさの姉妹において特異な点ではないでしょうか。

 

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単行本8巻 p5-7~8コマ目

マヤメグの対となるコンビ、みたいな登場の仕方だったこともあり、姉妹というよりは幼馴染的な関係が強めに見えていました。姉妹と幼馴染のハイブリッドという認識があったわけでもなく、やっぱり幼馴染っぽさ強めかな~とか思っていました。

 

・姉であること、とは?

神沙姉妹の姉妹意識が薄いとは書きましたけど、逆に

・「"やっぱり"エルはお姉ちゃんだ」

・エルが全く姉と思われてなかったことに遺憾の意を表していた

ことから、薄くとも確かに姉妹意識は存在しているとも言えます。

 

ただ、エルが姉と思われてない件への2人の動揺がデカいのを見るに(友達いなかったし)あまり他人からこういう事は言われなかったのかなと思うし、

ブラバの新作フレーバーの件を見るに親からは平等に愛されていそうだなとも判断できるので、外的要因からどちらが上とか考える機会は少なそうだなとも思います。

 

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きららMAX 2021年8月号 p108-5コマ目

ちょくちょく娘を意識したフレーバー出す社長、いくらなんでも甘々だと思う

 

では、一体なにが彼女たちに姉妹意識を与えたのでしょうか?

この姉妹意識を客観視した例として、こんなやりとりがあります。

 

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きららMAX 2021年8月号 p112-4コマ目

こう言わせる以上、何かしら共通項があるのではないでしょうか。

 

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お姉ちゃん図

 

・立場が人を作る?

ココアとエルの共通項を考えるに当たり、ではココアにはなにか特異性があるか?を整理します。

ココチノとしてのココアの姉という立場の特異性を考えてみて、『能動的に姉の立場を選んだ』ことがあるのかなと考えました。

 

もう少し具体的に言うと、姉妹関係はやはり環境の後押しが大きいというか、基本的には生きていたらふと妹/弟が

『できる』

『与えられる』

『降って湧いてくる』

みたいなことが起きて、姉になる。といった流れが普通なのかなと思います。

端的に言うと、姉の立場を与えられる、のが普通の流れ。

 

以上より、別に誰から言われたわけでもなく姉の立場を選んだことが、ココアを姉妹の姉と見たときの特異性と言えるのではと。

 

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単行本1巻 p13-3コマ目

 

神沙姉妹、エルの話に戻します。

双子における姉/妹という立場ですが、妹側は『目覚めたら姉がいる』点で普通の姉妹と大差ないのかなと思うのですが、姉側は先に述べた『降って湧いてくる』工程を挟まない点が一番の差異なのかなと思います。

それでも、親かどこかから「お姉ちゃんらしくしなさい」みたいなことを言われる等、何か環境的要因で姉の意識が強まる機会があれば普通の姉妹とあまり差異のない関係になるのかもしれません。

が、前項で書いたように特に『姉であること』を外部から求められていなかった、と仮定すると神沙姉妹はかなりフラットな関係が強くなるのではないか、と考えます。

 

では、神沙姉妹はどうして希薄ながらも姉妹意識が芽生えたのか、という話ですが、ココアと同じくエルが『姉の立場を選んだ』ことが大きいのではないでしょうか。

戸籍の上で『姉であること』に後押しされたことも多少あるとは思いますが、それ以外に姉の意識を生む要因は無いはずです。

 

意識したにせよ流された結果にせよ、エル自身が姉であることを選び、それを意識して生きてきたからこそ、ナツメが「やっぱりエルはお姉ちゃんだ」と言えるような関係が育まれたのではないでしょうか。

 

結論。ココアはエルに『姉になることを選んだ者』として同じ波長を感じたのではないか、という話。

エルを通して描かれる『お姉ちゃん』がどんな物なのか、今後に期待です。

 

まあ、もっと単純に『頼りないお姉ちゃん』の部分に同じ波長を感じていただけかもしれないですけど。

  

新たな姉妹を通してごちうさ世界がどんな姉妹観を描いていくか、今後にも期待です。

 

https://twitter.com/mangatimekirara/status/1405163702203011078?s=20